top of page

研究

 人間活動が環境に大きな影響を与える中で、「都市空間」は特に多様な人間活動が集中する空間であり、周辺環境を含めた都市空間・環境のあり方が現在大きく問われる時代となってきている。人口減少社会でのサスティナブルシティやコンパクトシティといった考え方、都市と農村の計画を一体として考える都市農村計画の考え方、大都市型でない地方都市型の都市空間のあるべき姿、といった新しい考え方を「環境」を軸に、従来の都市工学、社会工学という学問領域よりも、より環境形成に向けての考え方を取り込み、環境計画の構築に高めていこうとするのが「都市空間工学」である。現在、環境との調和が求められている地方都市を主たる対象として、都市計画、環境計画を大テーマに、以下に示すようなテーマをサブ・テーマに設定して研究を進めている。

1.時代に対応した土地利用制度の検討 

 平成12年の都市計画法改正により区域区分が選択制に移行し現行の線引きを廃止することが可能になったことは、地方都市の都市計画にとって大きな転換点となった。加えて近年の市町村合併の動きにより、都市計画区域の有無、用途地域の有無、線引きの有無が異なる市町村同士の合併により、同一市町村内に土地利用規制の異なる地域が存在するという新たな問題に対応することが迫られている。このような時代の変化を受け本研究室では、都市計画区域の再編・統合の問題、法改正で制度化された開発許可条例や特定用途制限地域の活用などについて検討している。

2.地方都市の中心市街地活性化

中心市街地の衰退が大きな問題となっている。財政難と人口減少という社会に突入した現在、これからの都市計画の方向性としてコンパクトシティの実現が喫緊の課題となった。中心市街地の衰退は郊外開発の影響と言われるものの、一方で人口減少、空き店舗や駐車場などの低未利用地の増加といった現象に対して計画的な対応が遅れていること、広範な商業系用途地域、高すぎる容積率が指定されていること等、内部市街地自体が環境形成上の問題点を抱えている。本研究室では、地方都市の中心市街地衰退問題に対して、商業機能の衰退にとどまらず、特に人口・従業者の減少に着目してその現象及び原因を究明するとともに、まちなか居住や就業地の確保、駐車場対策など市街地整備の面から、ひいては財政状況や都市経営の視点から中心市街地活性化への計画的対応のあり方を検討している。

3.農村地域での土地利用コントロール手法の
  問題点

地方都市の農村地域では、開発許可条例や地区計画等の現行法制度を活用して市街化調整区域での規制を緩和する、あるいは土地利用調整に関する土地利用計画を独自に策定するなどして、個別開発を誘導する試みが見られる。しかし、こうした試みはその運用を誤れば、本来市街化を優先すべき市街化区域・用途地域での土地利用転換を鈍化させるだけでなく、優良農地の侵食や農住混在の問題、更には周辺自治体への影響といった懸念が生じる。本研究室では、都市計画と農村土地利用計画との関わりを前提として、こうした試みの運用上の問題点を明らかにした上で、両計画の斉合のとれた包括的土地利用コントロール手法などを検討している。

4.用途地域の適用実態と問題点

今後の人口減少社会下では、地方都市は縮退を念頭に置いた都市計画が求められる。そこで都市計画法だけでは有効な土地利用規制を行い難い非線引き都市計画区域を対象に、これまでの用途地域拡大・縮小の実態を把握し、その要因を明らかにし、現在抱える問題点を指摘して、今後の縮退傾向下の都市計画の手法を考察する。

5.その他

地方都市の都市計画を考えるにあたって、ほとんどの研究者は特定の都市を対象に研究を進めているが、個々の都市が抱える固有の問題と地方都市全体の普遍的な問題を分離して位置付けにくく、地方都市全体の問題を体系的に整理した形で捉えにくい。そうした状況を踏まえて、本研究室は、<1>長岡市役所及び近辺の大学研究者との交流、<2>北陸、東北、東海を中心とした地方都市の大学研究者との交流を通じて、地方都市の都市計画に関する蓄積を高めようとしている。
 上記1.~4.を進めるにあたって、都市規模から地区スケールまで、多くの場合にGISソフトを用いて空間化を行った上で、データ処理を行っている。

​参考文献

・中出・樋口他、「中心市街地再生と持続可能なまちづくり」、学芸出版、2003
・岩本・松川・中出・樋口、「市町村が提示した計画白地の土地利用方針に対する都道府県の関与の実態とその課題に関する研究」、都市計画論文集40-3、pp.397-402、2005

担当 准教授 松川 寿也

   助教  丸岡 陽

学会活動(準備中)
bottom of page